死に直面するという経験

10/11/11

世界を変えたスティーブ・ジョブズが癌のため亡くなってからもうすぐ一週間になります。発明王エジソンなどと同じように「歴史上の人物」として名を残すことになった人ですが、その日以来多くの人が、彼が2005年に行ったスタンフォード大学でのスピーチを改めてシェアしていました。このブログでも「目標を持たない生き方」という記事でこのスピーチに言及し動画を載せたところでした。

彼の人生哲学を形作った数々の要素のひとつとして、禅の考え方が深い影響を与えていることは良く知られていますが、この「死に直面した」という経験もそのひとつでしょう。かなりの確率で助からないから死を覚悟しなさいと言われ、人生の棚卸しをして「本当に大切なことは何か」ということがいやでも明らかになった・・・という経験。先日、夫と観にいった映画「50/50」もこのテーマを扱っていました。タイトルの”50/50”は、フィフティ・フィフティ、つまり「五分五分」という意味で、主人公が宣告された癌の助かる見込みを意味しています。

映画はシリアスなドラマとコメディの要素が絡み合い、深刻なテーマながら悲壮になりすぎず、ストーリーが淡々と展開されていきました。実はこの映画は主人公の親友役をした俳優(Seth Rogen)の実際の友人が25歳で癌になったという経験をもとに作られたのです。

感想を書くとネタばれになってしまうかもしれないので、映画についてこれ以上は書きませんが、多くの人は、病気になったり、身近な人の死を体験することで初めて(あるいは改めて)日常のありがたさを実感します。そして「この生は限られた時間である」ということも。実際に自分でこの死に直面する体験をしない(できない)としても、こういった映画を見たり、体験者の本を読んだり、現実世界のニュースによって、その人の生き様や人生哲学に触れることはできます。時には、今の時間がいつまでも続くかのような錯覚を「そうではない」と気づかせてくれる疑似体験をすることも、スティーブ・ジョブズの言った「自分はいつか死ぬことを忘れずにいる」ために誰もが出来ることではないでしょうか。