気が散りやすい脳

02/14/11

最新号のTIME誌で、”Wired for Distraction?”と題された記事を見つけました。今やFacebookをはじめとしたソーシャル・メディアを引き合いに出すまでもなく、携帯電話や電子メールの普及で、子どもたちは起きている間、とても多くの時間を「ネット世界とつながって」暮らしています。この記事を書いた記者は「子どもがネット世界でいじめられていないか、不適切なサイトを見ていないかということよりも、これだけ常に『つながっている』ことが脳にどんな影響を及ぼすかについて心配している」と書いています。

記事では、まず”continuous partial attention”ということに対する危険について述べられています。直訳すれば「継続的な散漫な注意力」とでもいうのでしょうか。ある調査によると、8歳から18歳までの子どもは平均で7時間38分もの時間を「エンターテイメント・メディア」に費やしており、例えば「テレビを見ながら携帯メッセージ」などの時間をのべで計算するとその時間は11時間にもなるそうです。

続いて、脳から分泌される物質にまで言及し、普段からそういった邪魔がないような状態で集中して問題に取り組める人と、そうでない人では違う物質が出ていると説明しています。同時に二つ以上のことを行うことを英語で”multi-tasking”と言います。普段からネットや携帯で「つながって」いて、何かをしながらメールやメッセージを見たりしている人のことを”multi-tasker”と言及し、彼らはそうでない人たちと比較すると、情報を吸収する際に脳の違う部分が活発になっているため、結果として「”multi-tasker”は単純作業で働くには問題がないが、今の子どもたちが将来的に高収入の仕事を得たいと思ったら必要不可欠になるハイレベルの思考をすることは難しい」と結論付けています。そういったハイレベルの思考をするには脳の海馬という部分を活発にしなければならないのですが、常にメッセージで邪魔されながら何かを習うことに慣れてしまうとそれがうまく作用しないという趣旨でした。

この記者は11歳のお子さんを持つ父親でもあるため、起きている間中ネットや携帯電話とつながっている状態を好ましくないものと考え、学校にいる間はFacebookは見ない、携帯電話使用も夜9時半まで、などという一定のルールを設けたと書いていました。私もこの記事を読んで、子どもたちの脳は私たちの世代とはきっと違っているのだろうと思わずにいられませんでした。私がメールを日常的に使い始めたのはせいぜい大学院留学時代なのでまだ10年ちょっとくらいのものですが、それでも、コンピュータに向かっている1時間ほどの間、Facebookやメールを開かずに集中して仕事をすることが難しいと感じることもあります(よいアイディアが浮かばないときはなおさらです)。これは、人間は「他人とつながっていたい」と感じる社交的な動物だからで、「メッセージがあります」という知らせを見ると脳にドーパミンという物質が出るからなのだそうです。生まれたときからコンピュータのみならずモバイル端末が周囲にあるような状況では、この記者のように親がこの問題について認識して、対策を講じていかないと、「必要な時には海馬がちゃんと働ける」ように情報を吸収させ物事を習わせていくことは困難でしょう。家で両親が四六時中コンピュータに向かっている姿を見せることにも問題があるに違いないと危機感を感じさせる記事でした。

母親の苦悩

07/08/10

Mother’s Struggle

(Dear English readers of my blog – this post is about how parents’ low-esteem affect their parenting style. This post is in Japanese only)

何回かにわたって古荘先生の著書「日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか」について書いています。この本のタイトルは「子ども」となっていますが、実は今子育てをしている世代の大人にも自尊感情が低い人がたくさんいるように思います。

sad-girl先日、ツイッターのつぶやきで「ジュースをこぼした子どもに腹を立てて『あんたそれでも人間なの。何度言ったらわかるのよ』」という言い方をしていたある母親について、「おっかない」「そんな母親の元に生まれなくてよかった」という感想をつぶやいている人がいました。実際にその場面を見たわけではありませんが、ツイッターに書き込んだ人はその母親の言い方や顔から、子どもに対する愛情が感じられずこわいなーと思ったためそのようなつぶやきをされたのでしょう。でも、私がそのつぶやきを見て思ったことは、「何がその母親をそこまで追い詰めているのか」ということです。小さなお子さんをお持ちの方なら、「何回言ったらわかるの」と思ったことは一度や二度ではないはずです。それが、ジュースをこぼすならともかく、たたく、蹴る、おもちゃを投げる、車が往来する駐車場を勝手に走り回るなど、こちらも痛い思いや怖い思いをしながら、大声をあげても聞かない、もう打つ手がないような無力感で、きつい言葉や言い方をしてしまうことは、人間には誰でもあります。

このつぶやきからは、周囲の助けもなく、孤独感を抱えながら一人で子どもをコントロールしようと必死になっている母親の姿を感じました。多分、日常生活の中で自分が本当に満足したと感じられる場面があまりないのではないでしょうか。そういう状況が長く続いていると、たとえ幼少時代の深い傷などがないとしても、自己肯定感は低くなり、まだまだ未熟で学ぶべきことがたくさんあり、私たちにそのサバイバルのすべてを委ねている子どもに対して、忍耐力を持って優しく接し続けることは不可能に近くなります。自尊感情が低い人は周囲に対しても非常に批判的になりがちです。もし、人間関係で、いつも同じ人がきつい言葉や態度で接してきて傷ついている・・と言う方は、「何がその人をそうさせているのか」と考えてみてください。その裏には自尊感情の低さが必ずあるはずです。

最近「RCB親子コミュニケーションコース」を受講された方が、感想として「これでいいんだと楽になった」そして「今まで以上に子どもがもっと大好きになり、大切に育てたいと思った」と書いてくださいました。子どもの自尊感情を高めるためのひとつの方法は、やはり子どもに「こうなってほしい」という大人の姿を見せること、つまり自分の自尊感情にも意識することです。その方は、子どもが今まで以上に好きで大切と思える自分のことも、より好きになったと確信しています。

*次回「RCB親子コミュニケーションコース」は電話コースが8月4日(水)から、スカイプコースが8月13日(金)からはじまります。スカイプコースは日本時間では土曜日の午後1時からです。